ビタミンD不足の子どもが急増中。その理由と、体への影響、そして対処法とは。

ビタミンD不足の子どもが急増中。その理由と、体への影響、そして対処法とは。

2000年ごろから、子供たちの間に❝くる病❞の報告が相次ぐように。

くる病はビタミンDが不足して、骨が柔らかくなってしまう病気。

栄養環境が悪かった戦時中にはよく知られていましたが、現代では長い間「過去の病気」になっていたはず。

なぜ近年子供たちの間で増えてきているのでしょうか。

なぜビタミンD欠乏によって引き起こされる病気が急増しているのでしょうか。

ビタミンDは体内でどんな働きをするの?

骨・歯の正常な成長を助けます。

ビタミンDの主な働きは、腸からのカルシウムの吸収を2-5倍程度に増加させることです。ビタミンDが不足すると、食事でカルシウムを摂っていても十分吸収されず、体としてカルシウム不足におちいります。血液中のカルシウム濃度が低下すると、けいれんなどの大きな症状が起こるため、骨からカルシウムを溶かしだして供給するようになります。その結果、骨の強度が低下して曲がりやすくなり、くる病(主に成長期の子ども)や骨軟化症(成人)といった症状を起こすようになります。

引用元:環境省「紫外線環境保健マニュアル2015」

くる病にははどんな症状があるの?

  • O脚・X脚⋯つかまり立ちやヨチヨチ歩きをするようになって下肢に負担がかかり、O脚やX脚に変形することで気付くことが多いようです。子どもの脚は、赤ちゃん~2歳ぐらいまではO脚、その後3歳ぐらいからX脚に変化し、6歳~8歳ぐらいで真っ直ぐな脚になるという成長過程を経ることがほとんど。くる病の症状としてのO脚・X脚は、こういった生理的な、自然なもの以外を指します。くる病が疑われるO脚は、脚をぴんと伸ばして足首をくっつけた時、両足の膝の間隔に大人の指で3本以上(約5㎝以上)開いてしまうかどうか、というのがひとつの目安です。X脚は膝をそろえて立った場合に、両足の踵が大人の指で4本以上(約7㎝以上)離れるようなときは、念のため医者の診察をお勧めします。
  • 頭蓋骨が柔らかくなる。
  • 2歳を過ぎても大泉門(ひたいの上にある骨と骨のつなぎ目部分)がはっきり残っている。
  • 低身長(身体の成長が早い時期に止まる)。
  • 関節が膨らむ。
  • 肋骨念珠(1つ1つの肋骨の一部がコブ状に膨らむ)。
  • 胸郭・脊柱の変形。
  • 低カルシウム血症(歩行や筋緊張の低下、けいれんなど)。

ビタミンDが不足すると、骨の密度が低下して骨折しやすくなる「骨粗しょう症」を引き起こす要因にもなります。

ビタミンDは癌の予防や、インフルエンザなどの感染症の予防、多発性硬化症、1型糖尿病などの自己免疫疾患の予防にも働いているといわれています。

国立がん研究センターは2018年3月8日発表のプレスリリースにおいて、「血中ビタミンD濃度が上昇すると、何らかのがんに罹患するリスクが低下することが分かりました。今回の研究の結果は、実験研究で示されているビタミンDのがん予防効果を支持するものと考えられます」としています。

インフルエンザなどの感染症予防にビタミンDは有効であるという研究があります。

ある調査では、1型糖尿病患者の8割以上がビタミンD₃欠乏状態との結果が出ています。

ビタミンDは一日どのぐらい摂取すればいいの?

1日にどのくらいのビタミンDを摂取すればいいのかという目安をはっきり数値で表すのはとても困難です。

人間はビタミンDを食べ物から摂取するのに加えて、紫外線によって体内で生成するという数値で表しにくい方法で摂取しているからです。

目安となるのは、厚生省が2015年に発表した「日本人の食事摂取基準」。

年齢別のビタミンD摂取目安量が載っています。

0~11カ月   |5

1~2歳    |2

3~5歳    |2.5

6~7歳    |3

8~9歳    |3.5

10~11歳   |4.5

12~14歳   |5.5

15~17歳   |6

18歳以上   |5.5

妊婦                   |7

授乳婦            |8

(単位はすべて㎍/日)

この数値はあくまで食事からの摂取目安量であり、体内で生成されるビタミンDは別に合算されると見込んでの数値です。

米国科学アカデミー医学研究所の食品栄養委員会(FNB)は、生後12カ月までは10㎍/日、1~70歳では一律15㎍/日、70歳以上は20㎍/日ビタミンDを摂取することを推奨しています。この数値は食事からのビタミンD摂取と、日照によるビタミンD摂取を合算したビタミンD全体としての数値です。

日本骨粗鬆症学会・日本骨代謝学会・骨粗鬆症財団が編集した「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」では、骨粗鬆症予防のために10㎍/日~20㎍/日のビタミンDの摂取が推奨されています。

ビタミンDが不足しがちになる4つの理由とその対処法。

このうち1つでも当てはまればすぐビタミンDが不足するというのではありません。

「完全母乳」で赤ちゃんを育て、それに加えてほとんど紫外線を浴びさせていない、ビタミンDを補うサプリメントも与えていないというように、複数の要因が重なった場合にビタミンDが不足する可能性が高くなります。

①紫外線を過度に避ける。

世界的に紫外線の研究が研究が進んだことから、紫外線を浴びすぎると人の健康に害を与えることが分かってきました。

紫外線を徹底解説。知識があれば怖くない。

それに伴い、日本でも紫外線を予防することが推奨されています。

1998年に母子手帳から「日光浴」という文言が消えたもの、この流れの中にあります。

ところが人間には日光紫外線を使って、食物からの摂取だけでは不足しがちなビタミンDを体内で生成する仕組みを持っています。

紫外線を極端に避けることにより、この期待されたビタミンDが不足してしまうことになります。

〈対策〉適度な日光浴

どの程度の日光浴をすればいいのかという目安は、日光浴を推奨する団体によって差異があります。

両手の甲くらいの面積が 15 分間日光にあたる程度、または日陰で 30 分間くらい過ごす程度で、食品から平均的に摂取されるビタミンDとあわせて十分なビタミンDが供給されるものと思われます。

環境省「紫外線環境保健マニュアル2008

 

国立研究開発法人国立環境研究所 地球環境研究センターは、ビタミンDを10㎍を生成するのに必要な紫外線の照射時間を「お勧めする日光照射時間」として現在の速報値を教えてくれるサイトを提供してくれています。

ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報モバイル版

ここで表示される時間は、成人が1日に必要とされるビタミンDの総量を基準にしています。

乳幼児の場合は表示される時間の半分以下で大丈夫でしょう。

なお、毎日この時間の日光浴が必要なわけではありません。体内のビタミンDは約10日程度保持されるといわれますので、この期間で平均的にこの時間日光を浴びていれば大丈夫です。

国立研究開発法人国立環境研究所 地球環境研究センターのホームページからの引用

ビタミンD生成には紫外線B波が必要です。紫外線B波はガラスを透過しないので、ガラス越しの日光浴ではビタミンDは生成されません。同じ理由から、日焼け止めをしっかりと塗った場合もビタミンDの生成は期待できません。SPF30の日焼け止めをしていると、皮下でのビタミンD産生は5%以下に落ちてしまいます。

②食生活の変化。

ビタミンDはビタミンD₂からビタミンD₇まで6種類ありますが、そのうち体内で効果的に作用するのはビタミンD₂とビタミンD₃です。

ビタミンD₂は植物から摂取できる(植物性由来)栄養素。主にきくらげ、しいたけなどのキノコ類からのみ摂取することができます。キノコ類以外の通常の食材である穀物、果実、海藻、野菜類には事実上含まれていません。

ビタミンD₃は動物から摂取できます(動物性由来)。魚類に豊富に含まれます。卵黄にも比較的多く含まれています。肉類にはほとんど含まれていません。イカ、エビ、タコ、アサリなどの貝類・甲殻類には全く含まれていません。

食の嗜好の変化により、ビタミンDが豊富に含まれる魚類やキノコ類をあまり食べない人が多くなったことが、ビタミンD不足になる一番の原因と考えられます。

〈対策〉

カルシウムといっしょにビタミンDを多く含む食品を毎日の食事に取り入れましょう。

骨粗鬆症財団は、ビタミンD摂取におすすめの食材として、イワシの丸干し、サンマ、しらす干し、さけ、ブリ、干し椎茸、乾燥きくらげなどを挙げています。

公益財団法人骨粗鬆症財団 ビタミンDを多く含む食品

椎茸は自分で干すのがおススメ。

干し椎茸は生椎茸よりもビタミンDが多く含まれていることが知られていますが、これは天日干しにしたものの場合。最近多く出回っている熱風で椎茸を乾燥させている干し椎茸はこの限りではありません。紫外線に当たっていないからです。このような干し椎茸であっても、調理前に1時間程度でも自分で天日干しにすれば、ビタミンDの含有量は増えます。

生の椎茸、えのきだけ、しめじを自分で天日干しにするだけで、ビタミンDはアップします。

キノコ類は炒めるとビタミンDの吸収力がアップ。

ビタミンDは脂溶性なので、油と一緒に摂ると吸収力が増します。魚には身に油が含まれているのでさらに油を加える必要はありませんが、キノコ類などは炒め物などにするのがおススメです。

③アトピー性皮膚炎に対する除去食。

厚生労働省が最近行った1歳6カ月、3歳時健康診査での全国調査によると、アトピー性皮膚炎は平成4年から平成13年にかけて1.5倍から2倍弱増加していることを示唆するものだったそうです。

アトピー性皮膚炎の対処の一環として、医師の指導がないままに原因食材を完全に除去すると、ビタミンD不足に陥ることがあります。

アトピー性皮膚炎の原因となるものとして最も多いのは「鶏卵」。

鶏卵を除去し、代わりにビタミンDをキノコ類や鮭などの魚類で意識的に補わなければ、体内のビタミンDは不足しがちになってしまいます。

〈対策〉アレルギーの原因となる食材以外で意識的にビタミンDを。場合によっては子供用のサプリメントを用法・用量を守って与えても。

④完全母乳での育児。

厚生労働省は5年ごとに見直される「日本人の食事摂取基準」の2010年度版では、0カ月から11カ月までの赤ちゃんが食事で摂取することが望ましいビタミンD量として、

「適度な日光照射*を受ける環境にある乳児」→2.5㎍

(*ここでの適度な日照照射とは、❝乳児が顔の表面だけなら2時間 / 週の日照、顔と手足の表面なら 30分間/週の日照を受けること❞をいいます)。

「日光照射を受ける機会がない乳児」→5.0㎍

としていました。

ところが母乳栄養児にくる病が多く見られたことから、2015年度版においては日光照射の有無・多少にかかわらず、一律5㎍/日と変更した経緯があります*

*米国科学アカデミー医学研究所の食品栄養委員会(FNB)は、生後12カ月までは10㎍/日のビタミンD摂取を推奨しています。アメリカ小児科学会は2003年のガイドラインで「くる病のリスクを回避できるビタミンD必要量」として5㎍/日を推奨しています。

母乳に含まれるビタミンDの割合と赤ちゃんが1日に飲む母乳の量を計算すると、お母さんの栄養状態にもよりますが、母乳だけを与えた場合2.4㎍/日のビタミンDしか摂取出来ないという研究もあります。

厚生労働省が推奨するビタミンD量の半分程度しか摂取できていないのです。

実際に、ビタミンD欠乏性くる病になっている子どものほとんどが、「完全母乳」で育てられています。

母乳は赤ちゃんに免疫を与えるという面でとても優れていますが、ビタミンDに関しては別途考えてあげる必要があります。

〈対策〉

適度な日光浴。

場合によっては赤ちゃん用のサプリメントを。

生後5~6カ月から離乳食を。

離乳食で母乳だけでは不足しがちな栄養素を摂取できるようにしましましょう。

過ぎたるは及ばざるがごとし。ビタミンDの過剰摂取に注意しましょう。

乳児が多量のビタミンD接種を続けると、かえって成長遅延が生じる場合があります。

大人についても多量のビタミンDは高カルシウム血症、腎障害など体に害を及ぼす危険性があります。

紫外線による皮膚でのビタミンD産生は調節されていて、必要以上のビタミンDは産生されません。

注意しないといけないのは、サプリメントによって栄養素を補充する場合。

必ず用法・用量を守って服用してください。