おたふくかぜの予防接種、2回接種は世界の常識?日本で定期接種になるのはいつ?

おたふくかぜの予防接種、2回接種は世界の常識?日本で定期接種になるのはいつ?

現在おたふくかぜの予防接種は、親が受けるか受けないかを決め費用を自己負担する任意接種となっています。

これは世界の保険政策としてはめずらしいこと。

世界ではほとんどの国が費用を負担する定期接種が主流です。

しかも2回。

世界の主流がおたふくかぜの撲滅に動いているには理由があるはずです。

任意接種だからといって、おたふく風邪の予防接種を子供に受けさせないままでいいのでしょうか。

おたふくかぜの感染経路、症状は?

おたふくかぜの感染経路は?

基本的な感染経路は唾液を介した飛沫によるヒトーヒト間の感染である。耳下腺腫脹の6日前~9日後までの間に唾液中へのウイルスの排泄があり、感染源となる。尿中にもウイルスは排泄されるので、感染源となりうる。

引用元:国立感染症研究所「おたふくかぜワクチンに関するファクトシート」

おたふく風邪の感染力は比較的高く、国立感染症研究所によると、おたふくかぜに感染したことがなく、ワクチンも接種していない人(感受性者)ばかりの集団のなかに1人の患者がいると、平均で4~7、もしくは11~14人の人に感染させてしまいます。

風疹や水痘と同程度の感染力があります。

おたふくかぜのウイルスに感染すると、2~3週間の潜伏期間(通常18日)を経て耳の下が腫れるなどの症状が出ます。

症状が出る6日前から、症状が出て9日後ぐらいまで人に感染させてしまう恐れがありますが、症状が出る1~2日前から症状が出て5日後までが特に強い感染力があります。

ウイルスに感染しても耳下腺腫脹などの症状が出ない不顕性感染者も20~30%程度いるとされています。

この場合、症状が出ていないだけでおたふくかぜの原因菌であるムンプスウイルスは保有しているので、周りの人におたふくかぜを感染させてしまいます。

学校保健安全法により「耳下腺、顎下腺又は舌下腺の腫脹が始まった後五日を経過し、かつ、全身状態が良好となるまで」学校を出席停止になるにもかかわらず、日本では現在5~6年に1度おたふくかぜの大流行が起こっています。

これは耳の下の腫れが始まり感染に気づく前にすでに人に感染させてしまう可能性があること、また、そもそも症状が出ないため感染に気付かないまま学校などに登校してしまっていることもその一因だと思われます。

おたふくかぜの症状は?

主な症状は耳下腺(耳の前下方)の腫れと痛み、発熱などです。

耳下腺の腫れは片方だけに起こる場合、左右の両方に起こる場合、どちらもあります。

おたふくかぜ自体の症状としては重症になることはまれで、通常1~2週間で快癒します。

おたふくかぜは合併症が怖い。感染者の数百人に1人が難聴になるとの報告も。

おたふくかぜの合併症としては、無菌性髄膜炎、難聴、膵炎、精巣炎、卵巣炎などがあります。

このなかで一番子供たちに深刻な後遺症を残すのが、ムンプス難聴です。

ムンプス難聴

日本耳鼻咽喉学会が2015年から2016年にかけて行った大規模な調査によると、2年間で少なくとも348人がおたふくかぜの合併症によって難聴となっています。

そのなかで詳細が明らかな336人について検討したところ、一側難聴(片方の耳だけの難聴)が317人、両耳難聴が15人との結果が。

〈ムンプスによって一側難聴となった方の最終的な聴力レベル〉

重度難聴236人/高度難聴25人/中等度難聴9人/軽度難聴3人/程度不明14人

重度難聴とは耳元で話しても聞こえない程度の難聴で、補聴器を付けても聞こえないことが多くなります。

高度難聴とは、普通の会話が聞き取れない程度の難聴で、非常に大きな声で話すか、補聴器を付けないと会話が聞き取りにくい状態です。補聴器を付けても聞き取れないこともあります。

ムンプス難聴になってしまった方の耳は、ほとんど聴力が失われてしまう場合が多いことが分かります。

昔は「もう片方が聞こえるからいいじゃないか」などという心無い言葉をかける医者もいたようですが、片目を見えないように押さえて歩くと遠近感が分からなくなってしまうように、片方の耳だけで音を聞くと、どちらの方向から音が聞こえてくるのか分かりづらく、日常生活に大変な不便を強いられてしまいます。

難聴に伴う耳鳴りや頭痛などにも悩まされてしまいます。

 

稀にではありますが、両方の耳がムンプス難聴になってしまうことがあります。

〈ムンプスによって両側難聴になった方の、障害程度の軽い方の最終的な聴力レベル〉

重度難聴9人/高度難聴4人/中程度難聴1人/軽度難聴1人/不明1人

16人のうち7名が両耳が高度以上の難聴となり、日常生活に非常な不便を強いられることになりました。

このうち、7名が人工内耳埋込手術を受けています。

6名が補聴器を使用することになりました。

無菌性髄膜炎

おたふくかぜの合併症のうち一番多いのが無菌性髄膜炎で、1~10%に起こります。

耳下腺腫脹から3日~10日後に発熱、嘔吐、頭痛などの症状が出ます。

一般的に予後良好で後遺症なく軽快しますが、5~6千例に1例(0.02%~0.03%)と稀ではありますが脳炎を起こすことがあります。

膵炎

数%の人が膵炎を合併しますが、重症化することはあまりありません。

腹痛、吐き気、下痢、発熱などの症状がでますが、1週間程度でおさまります。

睾丸炎

思春期以降におたふくかぜに感染した場合、20~40%という高い割合で発症します。

耳下腺膨張後3~5日後に睾丸が腫れたり、強い痛みを感じます。

発熱、頭痛、吐き気などの症状も。

通常は1週間程度で自然に症状がおさまりますが、耐えがたい痛みにより入院治療が必要になる場合もあります。

よく「大人がおたふくかぜになると不妊になる」と言われますが、それは両方が睾丸炎になってしまった時。

通常は片側のみに発症し、不妊症になることは稀だと言われています。

睾丸炎から生殖能力の障害に発展するのは10%程度との報告もあります。

卵巣炎

思春期以降に女性がおたふくかぜに感染すると、約5%が卵巣炎を合併します。

睾丸炎と同じく片側だけに発症することが多く、不妊になることは稀だと言われています。

任意接種だからといって、予防接種受けなくて本当に大丈夫?

先進国の中でなぜ日本だけおたふくかぜの予防接種が任意接種のままなの?

おたふくかぜの予防接種をまだ子供に受けさせていない方の多くは、「本当に子供に必要な予防接種なら、麻疹やポリオのように定期接種になっているんじゃないの?」と思われているのではないでしょうか。

日本でもおたふくかぜの予防接種の必要性は十分認知されていて、1989年に「麻疹の定期接種の際に、麻疹・風疹・おたふくかぜの三種混合ワクチンを選択できる」という形でおたふくかぜワクチンが定期接種化されたことがあります。

しかし、予防接種の副作用として無菌性髄膜炎が多く発生したことから、1993年におたふくかぜワクチンが含まれる三種混合ワクチンの定期接種は中止され、そのまま現在に至っています。

2018年5月14日には、予防接種推進専門評議会が「おたふくかぜワクチンの定期接種化に関する要望」を厚生労働省に提出し、現状の打開を求めるとともに、おたふくかぜワクチンの定期接種化を阻む大きな理由である副作用について、こう述べています

小児科医が予防接種歴の有無で追跡調査した報告によれば、ムンプス自然罹患では約80人に1人(1.27%)が髄膜炎を発症していたのに対し、予防接種の副副反応としての髄膜炎発症頻度は0.01∼0.05%であったとされています。

いま親としてできること。その最善のこと。

おたふくかぜの予防接種を任意で受けるとすると、病院にもよりますが1回4000円~8000円ほどかかります。

2回接種するとなると、その倍。

確かにこの値段は小さなお子さんを育てていらっしゃる若い世代には大きな出費です。

でも、おたふくかぜの定期接種化を待っていては、いつになるのか分かりません。

ぜひとも自費での接種を強くおすすめします。

多くの自治体が補助金を出しています。

まずはお住いの自治体で補助金が出ているのか調べていただけたらと思います。

 

〈参考文献〉

国立感染症研究所「おたふくかぜワクチンに関するファクトシート」

国立感染症研究所「おたふくかぜワクチンについて」

日本小児学会「おたふくかぜワクチン定期接種化要望書」

日本耳鼻咽喉学会「2015-2016年にかけて発症したムンプス難聴の大規模全国調査」

予防接種推進専門評議会「おたふくかぜワクチンの定期接種化に関する要望」

厚生労働省 健康局 結核感染症課 予防接種室「おたふくかぜワクチンの接種対象者・接種方法・およびワクチン(株)の選定について」